伝わらぬ想い(白哉×恋次 獣道様より)
ルキアを取り戻すために、朽木白哉を超える力を得なければと、我武者羅に突き進んできた。六番隊に移動になる前、在籍していた隊の隊長達の強さも桁外れであったことは間違いない。心に秘めた目標がなければ、十一番隊に残留することを望んだだろう。そこは居心地のいい場所であったのだから。
だが、真央霊術院を卒業し、護廷十三隊に入隊してからずっと、朽木白哉のことしか考えられなかった。何をしていても、一目見ただけのその姿は脳裏から消えることはなかったのだ。
死神になったからといって、その姿を見かける確率など無いに等しく、姿を見なければ、歳月が経てば顔形mおぼろげになっていくかと恐れていたが、目に焼きついてしまっていた。その理由を憎いからだろうと、そう思っていた。憎しみは決して薄れることなく、憎しみに燃える胸の炎は、歳月が経てば経つほど激しさを増していったから。
六番隊の副隊長に任ぜられた時、情念の炎を燃やし続けていた相手の目の前に、ようやく立つことが出来るのだとほくそ笑んだ。
しかし、ようやく待ち望んだ地位を手に入れたというのに、影すら踏めぬほどに恐れ戦いている自分がいた。
この男には到底敵わない、その身体に触れることなど、出来るはずもないとーーーーーー手が届く位置にいる憎い相手を前にしても、牙を剥くことなく、付き従ってしまっていた。憎い、憎いとーーー呪いのように念じながらも、従順に振舞っていたが、視線を合わすことだけは避け続けていた。
緋真の願いを叶える為に、ルキアを迎えに真央霊術院に出向いた時ーーーーその場に突然現れた少年は、紅蓮の炎のような髪をして精悍であった。胸を貫いたのは、鮮烈な印象の緋色で、その鮮やかな色は、しばらく目に焼きついていたが、歳月が経つに従い薄れていった。
だが、二度目にその色に出会った時、容赦なく心臓を締め上げるような呪縛となったのだ。忘れようとしていたのだと、思い知った。静寂に支配された世界に篭り、緋真との穏やかな愛を失うまいとしていたのだと。
知られぬように霊圧を消し、その姿を追い続けたこともある。それほどまでに執着してしまう自分が信じられず、愚かな事をと自らを嘲笑してみても、その執着は薄れることはなかった。
ルキアとの数少ない会話の中で、琉魂街での事になれば、必ずといっていいほど、執着する少年ーー恋次の名が出た。
だからといって、詳しい話など聴けるはずもなく、聞き流す態度を取っていたのだが、恋次の全てを知りたいと願っていた。
惹かれてしまう心を封じる術はなく、歳月を重ねるごとに執着は増していくばかりであった。そして、副隊長が引退する事となり、総隊長から後任の打診があった時、提示された候補者達ではなく、恋次を望んだのだ。
傍に仕えるようになれば、この執着も薄れてしまうのではないかという期待もあった。彼の実態を知れば、幻滅してしまうのではないかと。
しかし、身近にいるようになれば、一挙一動を気にしてしまい、それを気取られぬようにするには苦労することになった。そして、異常ともいえる執着が、恋着であると分かったのだ。だが、着任してきてから、恋次は一度も視線を合わそうとせず、従順に振舞ってはいるが、自分に反発しているのが痛いほど分かった。
何が原因であるのか分からず、然りとて問い質すことも出来ず、放置しておいたのだが。徹底的に避け続けられると、物悲しい気分になり、理由を聞かずにはおれなくなった。
白哉は、報告書の内容を棒読みする恋次に手を伸ばし、咄嗟に身を引きかけた二の腕掴んで引き寄せ、そして顎を掴むと自分の方に向けさせた。その動作は乱暴で、白哉の指は恋次の肌に食い込むほどであった。
「何故、私を見ないのだ」
「・・・・・・・・」
意表を突く白哉の行動に、恋次は言葉を発することもなく、瞬きもせず凝視するだけであった。
「返答せよ」
白哉の怒りを含んだ声に我に返った恋次は、その手を振り払い後方へ下がったが、その態度は荒っぽく、不躾だったことに気付くと、慌てて頭を下げた。しかし、問いかけに対する返答はせず、頭を下げたまま報告は終ったことを告げる。
「まだ終ってはおらぬ。私の質問に答えよ」
ルキアを奪われた憎しみを、口にすることは出来なかった。白哉に対する情念が、憎しみだけではないことが分かってしまった今となっては。
視線を合わすことは出来たが、緋色の瞳の中では、恐怖と不安が交錯しており、掴んだ腕が小刻みに震えていたことを思い出すと、白哉は身を切られる思いになる。
執務室の空気は息苦しく、鉛のような重苦しい静けさに支配されていた。
真っ直ぐに見つめてくる白哉から目を逸らすことが出来ず、恋次は乾いた口を開いたが、声を出すことなく閉じてしまう。
怯えたままでは言葉も出せないだろうと考え、白哉は幾分やわらかい口調で尋ねた。
「私に不満があるなら口にせよ」
「・・・ ・・・ ・・・あ、ありません」
ようやく言葉を発し、不躾な態度で申し訳ありませんでしたと、恋次は深々と頭を下げたが、それで白哉が納得するはずもなく、理由を問い質される。
それでもひたすら不躾な態度であったことを謝り続け、その態度に根負けした白哉が折れた。もうよいとーーーそれは、突き放すような口調であったが、解放されたことに、恋次は胸を撫ぜおろした。
すぐに執務室をでた恋次は、思いの外温かかった白哉の体温を感じたことで酷く動揺していた。触れられた肌は、ジンジンと痺れ、そして熱を持ち疼きだす。
傍に仕えるようになって、初めて真正面から白哉の顔を見た。その顔は、目に焼きついているままでーーー憎い相手だと、一時たりとも忘れたことのない、美しく整いすぎた顔であったのだが。違う、と恋次は口に出してしまい、前からやってきた隊員が驚くのを見て、慌てて取り繕うと足早に副官用の部屋に入った。
憎いから、忘れなかったんじゃない。一瞬にして、心を奪われてしまっていたからだとーーー愛憎が絡まりあってしまう、ルキアのことを思えば、憎い相手であることは間違いないが、その一方では、急き上げる思いにかられて、白哉の足元にひざまづき、うっとりとその秀麗な顔を見上げてしまいそうで。
あのまま、解放されなければ、込み上げてくる激情が理性の制止を振り切って、乾いた口から愛の告白として迸り出てしまっただろう。
恋次は縺れる足で室内に入ったが、白哉の眼差しを思い出すとあとずさり、そして、背中に壁があたるとそのままずるずると座り込んだ。
執務室に残された白哉は、まだ恋次の温もりが残る指先を見つめていた。
叱咤するともりなどなかった、ただ、視線を合わさぬ理由を聞きたかっただけなのだが、恋次は謝罪するばかりで本心を口にはしなかった。
いや、その理由は知れたのだ。恐怖に見開かれていた緋色の瞳が如実に物語っていた。
視線を合わすことも出来ぬほど恐れられていたとは、目の当たりにしても信じたくはないが。そこまで恐れられているならば、理性など手放して、恋次の意思など踏みにじり、胸に渦巻く激情のまま陵辱してしまえばーーーだが、それで得られるのは一時の快楽だけで、結びたいと願っていた絆は永遠に失われてしまうだろう。
急くことはないのだと、白哉は自分に言い聞かせていた。
時間をかければ、恋次の心情も変化していくだろう。これから絆を深めていけばいいのだから。
白哉は普段どおり執務にとりかかったが、その瞳は失望の色がうかんでいた。
余談:獣道様から、相互記念にいただいたTEXTですvvかなり以前にいただいたのですが・・・どうしてもイメ画をつけたくて、こんな時期に・・・(げふん)「両想いなんだけれども、片想いな感じの切な目な白恋」とリクエストさせていただいたらば・・・こんな素敵なTEXTいただいちゃいましたよ!!!Vv獣道様ありがとうございましたVvじじいのへぼさい絵は置いといて。(置くんかえ・笑)素敵TEXTは必見ですVv
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